中国軍が極超音速ミサイル「東風(DF)-17」の実際の発射映像を初めて公開した。米国が中距離トマホーク巡航ミサイルの発射システム「タイフォン」を鹿児島に配備することへの対抗とみられている。
DF-17の発射シーン、実戦映像としては初
21日、中国国営の中央テレビ(CCTV)は、ロケット軍創設60周年の特別番組のなかで、ロケット軍が最近、北西部のゴビ砂漠で陸軍・空軍とともに合同訓練を実施したとして、関連する映像を公開した。映像には、強力な電磁妨害や精密打撃の脅威など、複雑な戦場環境を想定した状況下で、部隊が複数回にわたり模擬打撃を行う様子が収められていた。
CCTVは、今回の訓練に投入された最新ミサイル体系について、自動化の水準、機動性、命中精度、全天候作戦能力、そして防衛網の突破能力などを大きく向上させたと紹介した。
DF-17は新しい兵器ではない。2019年の建国記念日パレードと2025年の戦勝記念パレードですでに公開されている。ただし、実際の発射映像が公開されたのは今回が初めてだ。中国の軍事評論家・杜文龍氏はCCTVのインタビューで、今回の映像はDF-17の実発射状態が初めて公開された事例であり、ロケット軍の高い戦闘準備態勢を示すものだと評価した。


射程1800〜2500km…太平洋の米軍基地・空母を脅かす
DF-17は射程1800〜2500kmで、太平洋地域の米軍基地や空母を攻撃できると評価されている。脅威の核心は、搭載された極超音速滑空体にある。通常の弾道ミサイルは放物線を描いて飛ぶため軌道の予測や迎撃が比較的可能だが、極超音速滑空体は低い高度を変則的に滑空するため、既存の防衛網を突破しうると評価されている。
CCTVの軍事チャンネルは、DF-17の発射車両に似た移動式発射台に搭載された別のミサイルも併せて公開した。このミサイルはこれまで知られていなかった円錐形の二重構造を持つとみられ、専門家からは中距離弾道ミサイルDF-26の最新改良型ではないかとの見方が出ている。
杜氏は「過去のように固定された発射基地から作戦するのではなく、複雑な地形を移動しながら野外で任務を遂行するのが基本的な戦闘方式になった」と述べ、「複数の種類のミサイルが同時に登場したことは、多様な目標や作戦環境に対応できる能力を示すものだ」と付け加えた。
米軍タイフォン、22日から鹿児島・鹿屋基地に配備
今回の公開は、ある米軍システムの動きと連動している。米軍は22日から来月1日まで実施される日米共同訓練「ヴァリアント・シールド」のため、ワシントン州ルイス・マコード基地のタイフォン・ミサイルシステムを、鹿児島県の海上自衛隊鹿屋航空基地に配備する。
タイフォンは、射程約1600kmのトマホークミサイルを搭載できる対艦・対地攻撃用のシステムだ。鹿屋基地から発射すれば、中国本土にまで届く距離になる。米国が「中国本土に届くミサイル」を日本に持ち込んだのに対し、中国は「太平洋の米軍基地に届くミサイル」の映像で応じた構図だ。このため一部では、今回の公開を中国から米国と日本に向けた警告メッセージだと解釈する見方も出ている。

「訓練場」から「前進拠点」へ…保管案も検討
注目すべきは、タイフォンの「その後」だ。タイフォンは9月の「オリエント・シールド」訓練でも使用された後、10月中旬に鹿屋基地から撤収し、日本国内の別の米軍基地に保管される予定とされている。
昨年9月にもタイフォンが日本に臨時配備されたが、その時は訓練終了とともに撤収した。しかし今回は、撤収後も日本国内に保管する案が検討されているという点が異なる。日本政府内部では、このシステムを必要なときに迅速に展開できるよう国内に保管しておくこと自体が、中国に対する抑止力として機能しうるという分析も出ている。
同じタイフォンは、フィリピンでは2024年の訓練後も撤収せず、すでに常時配備の状態にある。日本がこの流れに近づくのかどうかが、今後の注目点として挙げられている。


米中の中距離ミサイル競争が本格化
今回の一連の動きは、東アジアにおいて米中の中距離ミサイル競争がはっきりと表面化したことを示している。CCTVは、中国のミサイル戦力がこの60余年で核・通常打撃能力をともに備えた総合的な戦力へと発展したと評価し、DF-17やDF-26、DF-31、DF-61など多数の新型ミサイルが実戦配備され、定期的に訓練へ投入されていると説明した。
直接の武力衝突よりも、互いに能力を見せ合うことで生まれる抑止の競争。その構図のなかで、日本やフィリピンといった同盟国・友好国の領土が前進拠点となり、有事の際には自動的に射程内へ組み込まれていく構造的なリスクが高まっている。


