小泉進次郎防衛相は2026年6月28日、韓国・ソウルの国防省を訪れ、芳名録に「有志有道(ゆうしゆうどう)」の四文字を記した。「意志あるところに道はある」という意味で、小泉氏が日頃から最も大切にする座右の銘だ。揮毫の下には「防衛大臣 小泉進次郎」と日付がはっきりと添えられた。この日、小泉防衛相は安圭伯(アン・ギュベク)国防部長官と日韓防衛相会談に臨み、両国空軍の特殊飛行隊交流、海上での捜索・救難共同訓練、人工知能(AI)など先端技術分野での防衛協力を一段と強化することで一致した。一方、日本側が求めてきた物品役務相互提供協定(ACSA)の締結では、目立った進展は得られなかった。
小泉進次郎が記した「有志有道」… 芳名録に込めたメッセージ
「有志有道」は「意志あるところに道はある」を意味し、米リンカーン大統領の名言「Where there is a will, there is a way」に通じる。小泉進次郎防衛相は自身の公式チャンネルでも、好きな言葉としてこの一句を挙げてきた。一時は冷え込み、再び解けつつある日韓関係のなかで、防衛相がみずから記した四文字は「意志さえあれば道は開ける」というメッセージとして受け止められる。

6回目の会談… 年内の相互訪問は23年ぶり
防衛省によると、日韓の防衛担当閣僚が1年以内に互いの国を訪問するのは、実に23年ぶりだ。今回の日韓防衛相会談は、今年1月の安長官の訪日に続く返礼の形で実現し、両国の「シャトル国防外交」が本格的に動き出したことを示す。小泉進次郎防衛相と安長官の会談は今回で6回目で、直前の会談は5月末、シンガポールでのアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の機会だった。
両閣僚は共同プレスステートメントで、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和の構築に向けた意思を再確認し、日韓・日米韓の協力を継続する方針を確認した。折しも小泉氏が入国した27日には、中国とロシアの軍用機が東シナ海や日本海の上空を共同飛行。小泉氏は記者会見で「我が国に対する示威行動」と強く批判し、厳しい安全保障環境を改めて印象づけた。


ブルーインパルスとブラックイーグルス、特殊飛行隊交流を強化
今回の日韓防衛相会談で注目された合意のひとつが、両国の特殊飛行隊交流だ。両閣僚は、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」と、韓国空軍の同種部隊「ブラックイーグルス」の協力・交流を発展させる方針で一致した。
背景には象徴的な「初の出来事」がある。ブラックイーグルスは今年1月28日、韓国・原州基地を出発し、サウジアラビアの「世界防衛産業展示会(WDS)2026」へ向かう途上、最初の経由地である航空自衛隊那覇基地で給油を受けた。航空自衛隊が韓国空軍機に給油を支援したのは、このときが初めてだ。空中給油ができないT-50B計9機(予備機含む)は、那覇を皮切りに9カ所を経由し、約1万1300キロを飛行した。冷え込んでいた時期を経て、両国の防衛交流が再び温まりつつあることを物語る一幕といえる。
海上の捜索・救難からAI・装備技術協力へ
両閣僚は、AIなど先端技術分野や防衛装備技術協力についても議論を進めることで一致した。海上では、多様な海難事故に備えた捜索・救難共同訓練(SAREX)をさらに発展させる方針だ。日韓のSAREXは6月7日、約9年ぶりに再開されたばかり。海上自衛隊の護衛艦「こんごう」と韓国海軍の揚陸艦が参加した。2018年のレーダー照射問題を機に中断して以来の再開であり、今回の合意はその流れを定着させる意味を持つ。
進まぬACSA、残された課題
一方、日本側が継続的に求めてきたACSA(物品役務相互提供協定)では、合意に至らなかった。ACSAは有事の際に弾薬・食料・燃料などの物資を相互に融通し合う国家間の取り決めで、締結されれば協力の水準は一段上がる。今回の会談でも協議されたとみられるが、韓国側は慎重だ。李在明大統領は、国民感情を踏まえれば現時点での受け入れは難しいとの立場を示しており、ACSAは引き続き日韓の懸案として残る。
卓球外交と青年安保対話
会談の場以外の日程も話題を呼んだ。両閣僚は前日、韓国・原州のブラックイーグルス部隊をともに訪れ、小泉防衛相はT-50Bに搭乗。安長官専用ヘリに同乗して移動した。安長官は、小泉防衛相の父・小泉純一郎元首相が訪韓した当時の国防日報の記事を額に入れて贈った。
28日午後には、安長官の選挙区にある韓国国防研究院(KIDA)で日韓の大学生ら約50人と「青年安保対話」を実施。続いて「日韓閣僚親善卓球試合」が開かれた。シングルスでは安長官が小泉防衛相を5対3で下し、閣僚チームと青年チームのダブルスは3対3の引き分けに終わった。卓球を趣味とする安長官は、今年1月の訪日時にも海上自衛隊横須賀地方総監部で小泉防衛相とラケットを交えている。「有志有道」を記した小泉進次郎防衛相の今回の訪韓は、安全保障の議題と「ソフト外交」が交差する場となった。












