カールグスタフ47年、陸上自衛隊のM3とM4を分ける圧倒的で決定的な差

カールグスタフは、我が自衛隊が47年間、ただの一度も手放さなかった歩兵火力の心臓部である。1979年に「84mm無反動砲」として制式化されたこのスウェーデン生まれの鋼管は、冷戦が終わり、誘導弾が戦場を覆い尽くした2026年の今なお、陸上自衛隊小銃小隊のかたわらに在り続けている。カールグスタフを採用した国は40か国を超えるが、半世紀近くを共に歩んだ国はそう多くない。

カールグスタフと陸上自衛隊、47年の同行

始まりは昭和53年度予算だった。89mmロケット発射筒M20の後継として選ばれ、1979年に制式化。平成2年度の調達終了までに、カールグスタフM2が約2,700門、部隊へ行き渡った。冷戦期、北海道へ押し寄せるソ連戦車を想定した、切迫した配備である。

そして決定的な一歩が1984年に訪れる。豊和工業によるライセンス生産の開始だ。輸入に頼りきらず、国内でつくり上げた——この事実は単なる調達以上の重みを持つ。部品も、整備も、熟練の手も、国内に積み上がったということだからだ。

小銃班の指先に乗る火力

運用は素朴で、そして頑強だ。小銃班に1門、砲手と弾薬手の2名1組。砲手は小銃ではなく9mm拳銃を携行する。砲身にライフリングが刻まれた歴とした「ライフル砲」であるため命中精度が高く、練度の高い組は毎分最大6発を撃ち込む。隊内でカールグスタフが「カール君」と親しまれる所以である。

M2からM3へ——「386門」が語るもの

平成24年度、「多用途ガン」という見慣れない予算項目が現れた。翌年度からの正式名称は**「84mm無反動砲(B)」**、その正体はM3だった。

当初の配備は水陸機動団を中心とした少数にとどまる。平成29年度から令和3年度にかけては、予算制約で調達そのものが途絶えた。令和4年度までの累計は、わずか61門。

ところが令和5年度、風向きが変わる。防衛費の大幅増額を背景に、325門の一括調達(予算35.7億円、契約は住商エアロシステム経由で約35億円)が断行された。累計は一気に386門。サーブも2023年10月に「300門超を受注、2025年納入」と公表している。対馬警備隊でも運用が確認されるなど、配備の裾野は着実に広がっている。

カールグスタフ47年、陸上自衛隊のM3とM4を分ける圧倒的で決定的な差
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カールグスタフ47年、陸上自衛隊のM3とM4を分ける圧倒的で決定的な差

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カールグスタフM3とM4を分ける決定的な違い

ここで多くの人が混乱する。同じ84mm、同じ弾薬を使うのに、なぜ世代を分けるのか。答えは**「何を削ぎ落としたか」**にある。

① 素材——鋼からカーボンへ、カーボンからチタンへ

M2は全鋼製だった。14.2kg。 M3は砲身の内筒(ライナー)と閉鎖機のベンチュリのみ鋼製として残し、外層を炭素繊維とエポキシ樹脂の積層構造に置き換え、約8.5kg(資料により8〜10kg)まで落とした。M4はさらに踏み込む。ライナーそのものをチタン製に変え、ベンチュリの設計も見直して、6.6〜6.8kg——すなわち7kg未満を達成した。

M3比で約28〜30%の軽量化。全長も1,064mmから950〜990mm(資料により差)へ縮み、1mを下回る。 数字にすればわずか数キロだが、20kgの装具を背負う歩兵にとっては別世界である。

② 寿命管理——手帳からカウンターへ

M3までの砲手は、発射弾数を手帳に書き留めていた。 不正確にならざるを得ない。M4には発射弾数カウンターが内蔵され、砲身一本ごとの残寿命を正確に把握できる。まだ使える砲身を捨てる無駄が消えるということだ。兵站の観点では、これこそ最大の変化かもしれない。

ちなみにM3の砲身耐久性はすでに実証されている。米陸軍の試験では、メーカー推奨値500発を大きく超えて2,360発まで、内腔に侵食の兆候が現れなかった。

③ 頭脳——照準器が弾薬と対話する

M4の真の飛躍はここだ。照準器と砲弾を結ぶ通信ケーブルが追加され、射撃統制装置が弾薬に情報を入力し、任意の地点で空中炸裂させられる。塹壕の中の人員も、建物の陰の目標も、上から覆う。さらにピカティニーレール、折りたたみ式前部グリップ、装填したまま安全に携行できる安全装置まで加わった。

それでいて、従来のカールグスタフ弾薬と完全な後方互換性を持つ。47年分の弾薬在庫がそのまま生きるということである。

項目M2M3M4
全長1,130mm約1,064mm約950〜990mm
重量14.2kg約8.5kg(資料により8〜10kg)6.6〜6.8kg
砲身ライナー鋼製鋼製+カーボン外筒チタン製
発射弾数カウンターなしなしあり
空中炸裂設定不可不可可(FCS連動)
自衛隊制式名84mm無反動砲84mm無反動砲(B)検討・試験段階
調達約2,700門386門

なぜ誘導弾ではなく、カールグスタフなのか

かつてこの火砲は、退役するはずだった。01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)が後を継ぐ計画だったからだ。しかし二つの現実が立ちはだかる。

ひとつはコスト。M2が1門あたり約250万円だった時代、軽MATはその10倍以上だった。もうひとつは使い勝手である。赤外線誘導弾は熱源を持たないトーチカや陣地に用いづらく、110mm個人携帯対戦車弾(パンツァーファウスト3)は使い捨てで、照明弾も発煙弾も撃てない。

結局、陸上自衛隊は算盤を弾き直した。そしてカールグスタフの圧倒的な汎用性が勝ったのである。

弾種性能
HEAT 551貫徹400mm以上 / 有効射程700m
HEAT 751タンデム弾頭、貫徹500mm以上
HEDP 502信管切替で対戦車榴弾⇔榴弾 / 移動目標300m・トーチカ500m・散開人員最大1,000m
ILLUM 545300〜2,100m、30秒間、直径400〜500mを照明
SMOKE 469発煙遮蔽

一挺で、戦車も、陣地も、夜も相手取る。 これが47年の答えである。

バックブラストという代償

むろん、カールグスタフにも弱点はある。後方45度・約60mは危険域となるため、屋内や車内からの射撃はできず、発砲時に舞い上がる土煙が射撃位置を暴いてしまう。それでもなお、歩兵の班単位が即座に取り出せる火力として、これに代わるものは今なお乏しい。

我が国はM3の「最後の顧客」である

興味深い事実がひとつ。サーブはM3の生産ラインを終了する予定であり、我が国がその最後の顧客なのだ。防衛装備庁はM3の後継としてM4を検討中で、令和6年度に費用調査の予算を要求した段階にある。正式導入はまだ確定発表されていない。

一方サーブは2026年5月、爆発反応装甲(ERA)に対応したタンデム弾HEAT 758(最大700mm貫徹)を公表した。導入国は非公開であり、日本との関連は確認されていない。

批判的な視点もある

軍事ジャーナリストの清谷信一氏は東洋経済オンラインへの寄稿で、「生産終了間際の旧式M3を325門も大人買いした」として調達判断を批判し、M2・M3・M4が併存する“三世代同居”が訓練と兵站を二重三重にすると指摘している。これは確定した評価ではなく批判的な少数意見だが、調達論議において併せて検討されるべき視点であることは間違いない。

南西の島々で、カールグスタフはなお答えであり続ける

島嶼防衛へと重心が移った今、ヘリや上陸用舟艇に積み込める軽量・多用途の火力は、その価値をむしろ高めている。水陸機動団が、対馬警備隊が、そして全国の普通科部隊がこの火砲を手放さない理由が、そこにある。

47年。時代が幾度も塗り替えられたその歳月を、カールグスタフは我が自衛隊と共に歩いてきた。スウェーデンに生まれ、日本の工場で鍛えられ、日本の山と島で磨かれたこの鋼管は、おそらく次の世代でも小銃班の肩の上にあるだろう。

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