スクワイア、船でも空でもない何かが浮かび上がった
スクワイア(Squire)は、船でも航空機でもありません。2026年4月、アメリカ・ロードアイランド沖でこの小さな無人機が初めて海面を飛び立ったとき、多くの人が同じ問いを口にしました。「あれは一体何だ?」
答えは無人の水上・航空複合機、英語でUnmanned Surface and Aerial Vehicle、略してUSA-Vです。製造元である米リジェント(REGENT)は、この新しい分類そのものをスクワイアに与えました。船のように浮かび、翼で飛び立つ機体。その境界に立つ存在です。
浮かび、滑り、飛び立つ
スクワイアの飛行は三段階に分かれます。最初はボートのような船体でただ水に浮かんでいます。速度が乗ると**水中翼(ハイドロフォイル)**が船体を水面から持ち上げ、抵抗を減らします。そして臨界速度に達したとき、ついに主翼が海面を蹴って浮かび上がります。
このとき使うのがWIG(地面効果)飛行です。翼と海面の間に閉じ込められた厚い空気のクッションに乗り、機体は海面から翼幅一つ分ほど以内の極めて低い高度を滑るように飛びます。効率が高く、同時にレーダーより低く、ソナーより高い絶妙な層をすり抜けます。
最も印象的なのは、これらのモード切替を人なしで自らこなす点です。4月13日の初飛行で、スクワイアは浮揚 → 水中翼 → 飛行の自律的な切替に成功しました。


小さく、無人で、安く — 設計思想
スクワイアの仕様は抑制されています。それが狙いです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 最高速度 | 約70ノット(時速約130km級) |
| 航続距離 | 約100海里(約185km) |
| ペイロード | 約50ポンド(約23kg) |
| 翼幅 | 18フィート(約5.5m) |
| 全長 | 13フィート(約4m) |
50ポンドというペイロードは、武器を積むには足りません。代わりに血液、緊急部品、医療キット、バッテリーといった**「まさに必要なもの」**を速く静かに運ぶことに最適化されています。リジェントのCEOは、この速度と耐波性をこの価格帯で実現した製品は市場にないと自信を見せました。
なぜ滑走路なしの飛行が重要なのか
太平洋には滑走路のない島が無数にあります。紛争時、米軍は敵の攻撃を避けて部隊を広く分散させますが、このとき港も飛行場もない孤立した地点まで物資を届けることが大きな課題になります。
船は遅く、航空機は飛行場を要します。スクワイアはその隙間を突きます。滑走路なし、港なし、操縦士なし — 2フィート(約0.6m)の波でも離着水できる小さな無人配送機。これが米海兵隊がこの機体の進捗を注視する理由です。


日本が注目する理由、そして誤解してはいけないこと
ここで日本の読者にとって興味深い点があります。このアメリカ製無人機に日本航空(JAL)が出資しているという事実です。8090インダストリーズ、ファウンダーズ・ファンド、ロッキード・マーティンらとともにリジェントへ1億ドル(約150億円)以上が集まり、その中にJALの名があります。
ただ、正確にしておくべき点があります。スクワイアは米軍のインド太平洋作戦のために開発された機体であり、「日本の島の防衛用に作られた」ものではありません。それでも、滑走路のない数百の島、分散した部隊、遅い船の限界という条件は、日本の南西諸島の防衛環境と驚くほど似ています。JALの出資が単なる財務判断を超えて見える理由です。


小さな末っ子、大きな家族
スクワイアはリジェントのシーグライダー一家の末っ子です。上には12人乗りの有人機バイスロイ(Viceroy)や、3,500ポンドを積んで160ノットで飛ぶ大型の自律型派生機が開発中です。スクワイアはその大きな構想の最初の実証、つまり「海と空の間の狭い隙間を実際に飛べる」という証拠なのです。
滑走路を捨て、海面をかすめる翼。スクワイアはまだ小さくとも、海上の物流と偵察の文法を変えるかもしれません。


