同じ銃、同じ射手──なのに片方だけ銃声が聞こえない
M24A2対人狙撃銃は、見た目こそ従来の銃と変わりません。同じ射手が、同じ構えで引き金を引く。ところが、片方だけ妙に音が小さいのです。この「静かな一発」の正体こそ、今回の物語の入り口です。
陸上自衛隊は2002年から、アメリカ・レミントン製のM24 SWSを「対人狙撃銃」の名称で運用してきました。7.62×51mm NATO弾を用いるボルトアクション狙撃銃で、精度と信頼性は世界各国の軍・警察が認める名銃でした。


5発の壁──なぜ改良が必要だったのか
問題は弾倉でした。初期のM24は弾倉が内部固定式で、5発を撃ち切ると一発ずつ手で再装填しなければなりません。精密射撃には向いていても、複数の目標へ素早く対応すべき局面では、致命的な「一拍の遅れ」が生まれます。
そこで登場したのが改良型です。2020年の富士総合火力演習で、消音器を装着したM24A2が公開され、その姿が初めて確認されました。
着脱式10発──「交換」へ変わった決定的転換
M24A2最大の変化は給弾方式です。固定式5発から、着脱式10発の箱型弾倉へ。一発ずつ詰めていた再装填が、弾倉ごと交換する方式へと切り替わりました。この差が実戦で生む余裕は、想像以上です。
さらに上部と側面にMARSレール(ピカティニー・レール)が追加され、銃床の長さとチークピースの高さを調整できるようになりました。射手の体格や状況に合わせたセッティングが可能になったのです。


消音器の真実──「ピシュッ」という無音は存在しない
M24A2対人狙撃銃で最も誤解されているのが、この消音器です。銃身は消音器を装着できるよう再設計されました。しかし、映画のような「ピシュッ」という完全な無音は、現実には存在しません。
7.62ミリ級消音器が軽減する音は、一般的におよそ20〜30デシベル程度です(自衛隊の公式な実測値は非公表)。音が消えるのではなく、高周波の破裂音が潰され、「あれは銃声なのか」さえ判別しにくくさせるのです。
結局これは静かな銃ではなく、露出する瞬間を最大限に遅らせるための生存設計でした。狙撃手にとって、位置の露出はそのまま死を意味するからです。
反転──このM24A2すら、すでに後継が決まっている
ところが、ここで反転があります。これほど進化したM24A2でさえ、すでに後継が決まっているのです。
主役はドイツ製のHK G28E2。陸上自衛隊はM24系列の後継として、2023年(令和5年)よりG28E2の調達を開始し、最大およそ900挺の導入を予定しています。量産単価は1挺あたり約700万円です。
ボルトアクションからセミオートへ──自衛隊狙撃手の「静かな一発」は、いまや別の銃へと引き継がれます。M24A2が開いた進化の扉を、G28E2が受け継いでいくのです。


